VIRGIN BMW | BMW Motorrad S1000RR(2023)試乗記/先代以前とは似て非なる個性を、ストリートで実感 試乗インプレ

BMW Motorrad S1000RR(2023)試乗記/先代以前とは似て非なる個性を、ストリートで実感

  • 掲載日/2023年04月24日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad 取材・文/中村 友彦 写真/富樫 秀明

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S1000RR(2023)
先代とのわかりやすい相違点は、超高速域の空力性能に貢献するウイングレットと、量産車初のステアリングアングルセンサー。ただし歴代S1000RRの仕様変更と同様に、2023年型は多方面に渡る改革が行われているのだ。

スーパースポーツにかけるBMWの意気込み

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スーパーバイクレースにおける4気筒車の排気量上限が750→1000ccに変更されたことに伴い、21世紀に入ってイッキに花開いた感があるリッタースーパースポーツの世界。当初のこの分野の主役は日本車とイタリア車だったものの、ここ十数年を振り返って最もリッタースーパースポーツに力を入れているのは、ドイツのBMWだろう。何と言っても、同社初の近代的なリッタースーパースポーツとして、2009年にデビューしたアルミツインスパーフレーム+横置き並列4気筒のS1000RRは、ライバル勢より格段に短いインターバルで仕様変更を重ね、さらにはサーキット指向の上級仕様として、2013年にはHP4、2021年からはM1000RRを販売しているのだから。

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BMWがここまでリッタースーパースポーツに注力している背景には、ヨーロッパ・スーパーストック選手権やドイツ/スペインのスーパーバイク選手権、マン島TTなどで、数多くの栄冠を獲得している一方で、スーパーバイク世界選手権と世界耐久選手権ではまだシリーズ制覇を実現していない……という事情があるような気がする。もっともそれ以前の話として、一昔前の同社のイメージを打ち破る、速さやアグレッシブや若々しさを前面に打ち出したこのシリーズの進化が、現在のBMWの開発陣は、単純に楽しくて仕方がないのかもしれない。

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S1000RR(2023) 特徴

飛躍的な進化を遂げた第6世代

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2019年に登場した第2世代のビッグマイナーチェンジ仕様。2023年型S1000RRはそういう表現をされることが多いようだけれど、改良点はマイナーチェンジの枠に収まらないほど多岐に及んでいる。なおインターネットには、2023年型を第6世代と称する記事も存在し、2012年、2015年、2017年、2019年の仕様変更を振り返ると、個人的にはその表現のほうがしっくり来るように思う。

先代以前とは異なる2023年型S1000RRの主な特徴は、超高速域の空力性能に貢献するウイングレットの追加、オーソドックスな曲面からバブルタイプに変更されたスクリーン、アンダーブラケットに設置された量産車初のステアリングアングルセンサー(加速時のスライドコントロールとブレーキングドリフトを考慮して追加)など。ただし、エンジンはシリンダーヘッドを中心とした刷新で最高出力を207→210psに高めているし、フレームは横方向の柔軟性を最適化するべく側面にクボミを設置。フェアリングやシートカウルも新作で、多種多様な電子デバイスやディメンションも刷新が図られている。

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既存のS1000RRを踏襲する形で、2023年型の日本仕様は、ベース:241万3000円、パフォーマンスパッケージ:256万3000円、Mパッケージ:286万4000円の3機種を設定。今回取り上げるのはMパッケージで、試乗車が装着するカーボンホイールやビレットレバー+ガード、アクラポビッチ製スポーツサインレンサーなどはオプション設定である。

S1000RR(2023) 試乗インプレッション

得たモノと失ったモノ

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超高速指向のサーキットをエキスパートライダーが走らないと、もはや美点が把握できないんじゃないか……。2023年型S1000RRに対して、そう感じている人は少なくないだろう。かく言う筆者もその1人で、誠に残念なことに、ストリートを一般的な技量の僕が走った今回の試乗では、パワーアップやウイングレット、ステアリングアングルセンサーなどの効果は確認できなかった。ただしそうではあっても、2023年型が先代以前とは別物であることは理解できた。いい意味でも悪い意味でも。

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まずは悪いほうの話をすると、先代以前がその気になればツーリングに使えなくもなかったのに対して、車体姿勢とライディングポジションが尻上がり&前下がりになり(シート高は先代+8mmの832mで、ハンドルは先代より低くてワイドな印象)、ハンドル切れ角の減少とホイールベースの延長で最小回転半径が大きくなった2023年型は、明らかにサーキット指向が強くなっている。もっともこのあたりの是非は、乗り手の趣向や経験で異なりそうだけれど、スーパースポーツに不慣れなライダーにとって、2023年型はハードルが高くなっているのだ。

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一方のいい面は、思い切った加速と減速が、先代以前よりイージーに行えること。その背景に多種多様な電子デバイスの進化があることは間違いないし、ディメンションが微妙に安定志向になったこと、キャスター/トレールが23度10分/93.8mm→23度60分/99.8mm、ホイールベースが1441→1457mmに変更されたことも、2023年型の走りを語るうえでは欠かせない要素だろう。

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ちなみに同業のエキスパートライダーによると、先代のMパッケージは、コーナー進入時のハードブレーキング時に前輪が車体中心に入って来るような、不安定な挙動を示すことがあって、それをカーボンホイール特有のマイナス要素かも?と感じたそうだが、今回試乗した2023年型はカーボンホイールを履くにも関わらず、そういった気配は一切ナシ。また、2023年型は加速中の安定感も特筆モノで、スライドやウイリーの心配を微塵もせずに、どんな場面でもアクセルをワイドオープンできる感触は、ちょっとヤミツキになるほど気持ちがよかった。

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いずれにしても、2023年型S1000RRの運動性能はシリーズ最強で、サーキットで先代と競争したら、間違いなく優位に立てるはずだ。でも前述したように僕としては、ツーリングに使いづらくなったことが引っかからないでもない。もちろんBMWは、ツーリングを考慮したアルミツインスパーフレーム+並列4気筒車として、ネイキッドのS1000RとクロスオーバーモデルのS1000XRを販売しているものの、サーキットに特化したM1000RRが存在する現状を考えると、ライバル勢とは趣が異なる、意外に万能なリッタースーパースポーツという独特の資質が失われたことは、ちょっと惜しいような気がする。

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S1000RR(2023) 詳細写真

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バブルタイプのスクリーンは、極端な伏せ姿勢でなくても実感できる抜群の整流効果を実現。ボックス形状のウイングレットは、150km/hで4.3kg、200km/hで7.6kg、300km/hで17.1kgのダウンフォースを発揮。

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ハンドルは先代より低くてワイドな印象。日本仕様はグリップヒーターとクルーズコントロールを標準装備。新規開発のステアリングステムは、フォークオフセットを28.5→25.5mmに短縮。

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6.5インチTFTカラーディスプレイは先代の構成を踏襲しながら、使い勝手を意識した改善を実施。シフトアップタイミングライトが追加され、トラクションコントロールやリアショックのダンパー調整などが容易に行えるようになった。

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アンダーブラケット上部には量産車初のステアリングアングルセンサーを設置。この機器で得た情報が、トラクションコントロールやスライド/スリップコントロールなどに活かされる。

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容量16.5ℓのガソリンタンク+カバーは、先代と共通のようだ。フィット感は非常に良好で、後端は減速時に身体のストッパーとして使いやすい。

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シート高はシリーズ最高の832mmになったが、近年のリッタースーパースポーツの基準で考えればまだ低い部類。オプションのローシートを導入すれば814mmに下げることが可能。

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テールカウルはかなりコンパクト化。先代と同じく、リアウインカーがテール/ストップランプ機能を兼務している。

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位置調整機能を備えるアルミ削り出しのステップはMパッケージならではのパーツだが、純正オプションとして購入することも可能。価格は15万9566円。

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M1000RRの技術を転用してシリンダーヘッドやエアボックスなどを再設計した並列4気筒エンジンは、先代+3psとなる210psの最高出力を獲得。

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ブレーキはF:φ320mmディスク+ニッシン対向式4ピストン/R:φ220mmディスク+片押し式1ピストンで、ブルーのフロントキャリパーはMパッケージ専用品。

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試乗車が装着するカーボンホイールはオプション設定。先代のMパッケージでは標準装備だったものの、2023年型はベース/パフォーマンスパッケージと同じアルミ鍛造ホイールに変更された。

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前後サスペンションはセミアクティブ式で、フロントフォークはマルゾッキ、リアショックはザックスとの共同開発。

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