VIRGIN BMW | BMW Motorrad S1000R(2023)試乗インプレ / ストリートに根付いたスーパーバイク 試乗インプレ

BMW Motorrad S1000R(2023)試乗インプレ / ストリートに根付いたスーパーバイク

  • 掲載日/2023年05月08日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad 取材・写真・文/小松 男

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BMW Motorrad S1000R(2023)
BMWモトラッドのラインナップで、スポーツネイキッドカテゴリーとされているロードスターシリーズ。その中でもっともホットなモデルとされているのがスーパーバイクモデルS1000RRを直系とするのがS1000Rだ。

2代目はパフォーマンスを引き上げつつ
懐を深めたまさしく正常進化系

S1000Rは、SBK(スーパーバイク世界選手権)に参戦するBMWモトラッドのホモロゲモデルであるS1000RRをベースとし、バーハンドル化やフェアリングの最適化などを施すことで、ストリートファイターバイクとして仕立て上げられたモデルだ。大きなポイントとなるのはストリートを走る際に肝となってくる低中回転域の扱いやすさをしっかりとチューニングした直列4気筒エンジン、BMWモトラッドならではの最新高性能電子デバイスの採用となっている。

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初代モデルが登場したのは2015年(発表は2014年)のことで、フルモデルチェンジが施された現行モデルは2021年モデルからラインナップされている。さらに今年は上位モデルにあたるM1000Rが仲間に加わった。スーパーバイクをベースとしたストリートファイターS1000Rに触れ、その印象をお伝えしてゆこう。

S1000R(2023) 特徴

コンパクトかつ200キロを割る軽量さ、
意外にも接しやすい一台

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ストリートファイターカテゴリーには様々なモーターサイクルブランドが参入しているが、BMWモトラッドのS1000Rはその中でも最後発とも言えるだろう。まずは出自の紐を解くことから話を始めていきたいと思う。

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多くのストリートファイターモデルが、フルカウルスポーツモデル(フラッグシップとされるスーパーバイクモデルが主流)をベースにネイキッド化し構成されているのと同様に、S1000Rもそのセオリーをならって作られている。それではなぜ後発となったかというと、BMWモトラッドのSBK参戦が他メーカーよりも遅かったということが挙げられる。

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そもそも水平対向2気筒、いわゆるボクサーエンジンのみだった(戦前の単気筒モデルは除く)BMWモトラッドが、次世代を担うモデルとして縦置きクランクの4気筒及び3気筒エンジンを搭載したKシリーズを発表したのは80年代に入ってからのこと。その後2000年代に入りKシリーズは横置きレイアウトに変更され、さらなるパフォーマンスアップが図られた。特にメガスポーツモデルとして人気を博したK1200Sの登場、そしてそれをベースとしたネイキッドモデル、つまりストリートファイター的な位置づけとされたK1200Rは世界中のライダーに衝撃を与えたものだった。

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横置きレイアウトの4気筒エンジンを完成させたBMWモトラッドが次に挑んだのがSBKというステージであり、2009年に初参戦を遂げている。S1000Rが発表されたのはそれから5年後の2014年のこととなった。2021年モデルではフルモデルチェンジが図られ、最高出力は165馬力まで引き上げられたほか、さらなる軽量化が図られ装備重量は199キロと200キロを下回る数値を誇る。果たしてそのようなハイパフォーマンスモデルは、実際にストリートで気持ちよく扱うことができるのだろうか。

S1000R(2023) 試乗インプレッション

高回転域でのワープのような加速は
ドラッグ的であり中毒性を持つ

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S1000Rに触れるのは久しぶりのことであり、現行モデルに至っては初見となった。以前は左右非対称の異形2灯ヘッドライトをアイデンティティ的に使用してきたS1000Rだったが、S1000RRが左右対称ヘッドライトへと変更したことに続き、フルモデルチェンジが施された2021年モデルから1灯ヘッドライトとなっている。以前の2灯タイプもデザイン的には好みであったが、このように大きくフェイスマスクが変えられると、旧型の古さは否めないというのが第一印象だ。

車両に跨ると、バーハンドルではあるものの、やや低く抑えられたセットポジションなので軽い前傾姿勢を強いられる。ステップ位置も高めなので、ドカッと座り込むというのではなく、攻撃的なライディングポジションとなっている。

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エンジンを始動すると並列4気筒エンジンの重厚なサウンドが周囲に響き渡る。ミッションを1速に入れて走り出す。多くの車両が排ガス規制に対応するために、モデルチェンジごとに極低回転域が扱いにくくなる傾向にある中で、S1000Rは出だしからスルスルとストレスなく車体を前方に押し出してくれる。大きな液晶ディスプレイに表示される回転計は、エンジンが温まるにつれて、レッドゾーンの始まる回転を引き上げて行く。シフトアップ/ダウンどちらも作動するギアシフトアシストの入りもミッションが温まるにつれて滑らかなになっていく感触を得つつ、私もそれに合わせて徐々にペースアップを図る。4000回転程を使ってのクルーズ的な走らせ方ができ、しかもそれが快適だ。ハンドルの切れ角も十分で、狭い路地を縫うような走らせ方も容易。”乗りやすい”これが市街地での感触だ。

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高回転域での感触を探るために高速道路へとステージを移す。ライディングモードはもっともスパルタンな味付けとされているダイナミックにセット。スロットルをワイドオープンすると7000回転からリミッターの作動する1万2000回転近辺まで、ワープするかのように一瞬で加速する。これは楽しい、思わずヘルメットの中で笑いがこみあげてくる(相当な加速感なのでむしろ険しい顔になっていたかもしれないが)。とはいえ高速道路であっても公道であるには違いはなく、相応の速度域を楽しむのであればサーキットに持ち込むしかない。

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ただしS1000Rの魅力というのは、そんなに回転数を引き上げなくても、速度を出さなくても楽しい、そこにこそあるのだ。 高速コーナーでも入り組んだコーナーが続くようなワインディングであっても、狙ったラインをトレースすることができる。しかもコーナー中のライン修正もナチュラルに行うことができる。この乗りやすさ、しかも乗れば乗るほどにしっくりと体に馴染んでくる感触は、BMWモトラッドならではの作りこみと言えよう。

付け加えるならばBMWモトラッド特有のジョグダイヤルスイッチは、とても使いやすく、車両の状況把握や各種セッティングも簡単に行うことができライダーフレンドリーさを感じさせてくれた。

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スーパーバイクをルーツとする超強烈なストリートファイターでありながら、実のところは常用域での扱いやすさが光るというのが現行S1000Rの大きな特徴だ。一週間、テスト車両と時間を共にしたが、ほぼ毎日、雨の日も走らせるほど気に入ったことは確かだ。

本年度はさらにパフォーマンスが引き上げられた(210馬力、0-100km/h加速3.2秒!!)M1000Rが登場した。たしかにスペックで見るとそれは物凄いものではあるが、実際に毎日乗るような使い方であれば、むしろS1000Rの方が適しているのかもしれないと私は考える。

S1000R(2023) 詳細写真

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ボアストローク80×49.7mmとショートストロークタイプの999cc並列4気筒エンジンを搭載。最高出力165馬力を11000回転で、最大トルク114Nmを9250回転で発生させる。全回転域でパワフルかつ扱いやすい特性となっている。

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φ45mmのマルゾッキ製倒立タイプ電子制御フロントフォークに、120/70ZR17サイズのタイヤを組み合わせる。ブレーキのタッチ、制動力のセッティングも素晴らしく、安心してスポーツライディングを楽しむことができる。

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2021モデルから1灯タイプのヘッドライトケースを採用し、フェイスマスクの印象を大きく変えている。中央にデイタイムLEDランニングライトを備えていることや、ライトケースの両脇にカウルをセットするなど、独特なデザインを用いている。

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後方高い位置にセットされたステップバーは、ステップ入力で方向転換をしやすく、ヒールプレートも体重を乗せやすい。ギアシフトアシストも良く調教されており、ストレスのないシフトアップ / ダウンを行える。

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ライダー側のシート高はノーマルで830mm、オプションにて810mmのローシート、850mmのハイシートが用意されている。車体が細身なことと軽量な車重で、足つき性の悪さは感じられなかった。

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もはやBMWモトラッドのアッパーモデルでは常識となった大型液晶ディスプレイ。発色が良く視認性も高い。写真では7000回転あたりからレッドゾーンとなっているが、エンジンが温まると徐々に引き上げられてゆく。イグニッションはキーレスタイプ。

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ロードスターモデルの証、プロペラエンブレムをトップブリッジ中央に備えたバーハンドル。幅、高さともにセットされるポジションが秀逸。左スイッチボックスにあるジョグダイヤルをはじめスイッチ類の操作性も良くストレスレス。

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アルミ製両持ちスイングアームに190/55ZR17サイズのタイヤをセットする。なおM鍛造ホイール、Mカーボンホイールがオプションで用意されており、カーボンホイールを採用するMパッケージでは、スタンダードと比べて5キロ軽量な194キロの車重となる。

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ストップランプ、テールポジションランプの機能も備えたリアウインカー。いわゆるテールランプを備えないために、テールセクションはすっきりとしたスポーティな印象を受ける。

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燃料タンク容量は16.5リットル、うちリザーブ容量を約4リットルとしている。2023年モデルは、テスト車両のMモータースポーツカラーの他、ブルーストーン・メタリック、ブラック・ストーム・メタリックがラインナップされる。

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フルアジャスタブルタイプのリアモノショックはリンクを介してスイングアームにセットされており、DDC(電子制御システム)が用いられていることで、手元のスイッチにてセッティングを行うことができる。

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物理キーを使いタンデムシートを外すと、多少ではあるもののユーティリティスペースが用意されている。ETC2.0は標準で装備、USBコネクタも備わっている。

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