VIRGIN BMW | K1600GT(2012-) 試乗インプレ

K1600GTの画像
BMW Motorrad K1600GT

K1600GT(2012-)

  • 掲載日/2012年10月25日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  取材・写真・文/小松 男

バイエルンのエンジン屋が作り上げた
極上のシルキーシックスと、それを包むパッケージング

伝統的なボクサーエンジンを作り続けることでも知られる BMW。Bayerishe Motoren Werke (バイエルン・エンジン工業) という看板を背負い、エンジンにこだわる姿勢は昔も今も不変だ。その BMW が昨年世に送り出したのが、量産モーターサイクルでは、現在唯一となる並列6気筒エンジンモデル、K1600GT / GTL だ。ここ日本には、当初 K1600GTL のみが上陸していたが、ファンからの強い要望により、このたび K1600GT も日本の道を走り始めることとなった。

乗り物好きが何よりも気になるのは、やはり心臓部であるエンジンであるし、なおかつ6気筒といえばなおのことだと思う。以前の BMW バイクはボクサーエンジンが一人歩きしてしまったイメージがあったが、縦置きクランクシャフトのマルチエンジンや、前方へ極端に傾けた並列マルチエンジン、最近ではパラレルツインやシングルなど、多岐に渡りエンジンの開発を続けてきた。

そしてここに来ての6気筒エンジンの登場である。歴史的に言えばボクサーエンジン以前、BMW がモーターサイクルを作る前に製造していた航空機用エンジンは直列6気筒であったし、4輪の分野においても BMW の6気筒エンジンは、シルキーシックスと称えられた。つまり新しいようでありつつも、BMW としては“6気筒”という形式そのものに意味があり、愛着を持っていたというわけだ。

続いてはそのエンジンの中身と、それを備えるためのシャシーを説明していこう。

K1600GTの特徴

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その大きさは、乗る者を選ぶかもしれない
だからこそ所有欲を高く満たしてくれる

6気筒でしかも 1600cc のエンジンともなれば、そのサイズをいかにコンパクトにするかということが課題となってくる。極限までエンジン幅を狭めた結果、各シリンダー間はわずかに5mmとかなり密着している。そして各シリンダーの距離を狭めたために、問題となってくるのは熱対策である。このエンジンは冷却システムの 70% をヘッドに集中させている。効率的に冷却するためにすべての気筒ごとにクロスフロータイプの冷却水経路を持たせた。つまりクーラントは縦方向ではなく、横方向へ流れている。

クランクケースはアルミ製、オイルサンプカバー、クラッチカバー、ヘッドカバーなどはマグネシウム製と、徹底的に軽量化にこだわった結果、エンジン単体で 102kg となった。K1300 シリーズに搭載される並列4気筒エンジンと比べても、エンジン幅で 80mm、単体重量で 17kg しか増大していないというから、どれほどまでにコンパクトかつ軽量なのかご理解いただけると思う。

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エンジン及びその他の構成パートを支えるメインフレームは、ダイキャスト鋳造アルミニウム製となっており約 16kg。ライダーとタンデマー、そして大きな旅の荷物などの、高負荷がかかるリアフレームはアルミニウム製で約4kg。大きなフェアリングを支持するフロントキャリアはマグネシウム製で約2kg。単体の重量を列挙したところで理解し難いだろうから、車両そのものの重量を説明すると、乾燥状態で 306kg、燃料満タンの走行可能状態でも 339kg だ。以前 BMW がラインナップしていた K1200LT の走行可能状態で 390kg は、ホンダ GL1800 が 417kg、ハーレー FLHTCU が 403kg、これらのモデルと比べれば、その軽さは歴然としたものだということが理解いただけるはずだ。

実車を目の前にすればお分かりになると思うが、K1600GT のような一般的な大型のモーターサイクルと比べてもはるかに質量が大きいと思えるものなのに、これほど軽い重量で纏め上げてきていることは、想像もつかないようなことだ。

とはいえ、一般的に大きく重いことは確かだ。取り回しには細心の注意が必要であるし、こと K1600GT に関して言えば、GTL に比べシートが高いので緊張感もある。それでも以前のフラッグシップモデルであった K1200LT のように後進ギアや、電動センタースタンドを採用しなかったことは、ライダーが扱えるサイズにしたということの表れなのだろう。

K1600GTの試乗インプレッション

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ジェントルかつゴージャスだが、時として暴力的に
一度はまれば病み付きになる中毒性

早速インプレッション車両を持ち出してみよう。余談だが K1600GT のように巨大な車格だと、跨るというよりも乗り込むという表現の方が似合う。車体を起しサイドスタンドをはらう。一連の動作をやや緊張しながら済ませエンジンを始動させる。並列6気筒特有のサウンドはアイドリングからそれと分かるものだ。ギアを一速に入れクラッチをつなげば、スルスルと何事もストレスなく発進する。走り出したときこそ車重とバランスにやや気を取られたが、交差点を3つもパスすれば慣れることができる。ラグジュアリーツアラーモデルの K1600GTL と比べ、低い位置でカットされたウインドスクリーンは、視界の邪魔になることなく良好。高速道路などで一番起こした状態にすれば、ライダーの体に風はほとんど当たらない。スクリーンを起こす瞬間だけ風の巻き込みによって体を前に持っていかれる感じになるが、気になるようなものではない。そしてスクリーンにゆがみは無く、ライディングの妨げになるようなことも無い。

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スロットルを開ければ恐怖を覚えるほどの加速を体感できるが、それはスーパースポーツバイク的な戦闘機イメージではなく、巨大トルクで蹴飛ばされる戦車のようなイメージだ。なおかつ、極上のスポーツ性能を備えているのだ。乗り出した当初こそやや遠く感じたハンドル位置だが、積極的にスポーツライディングをする際には、素晴らしく扱いやすいポジションとなっている。810 / 830mm の高さを切り替えることができるシートも、両足で地面を蹴ってバタバタ移動することは難しい高さだが、ライディング時のハンドル、シート、ステップの位置関係は素晴らしい。

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左のハンドルにあるジョグスイッチひとつで、さまざまなセッティングができるのもこのモデルの特徴だ。電子制御サスペンションの ESA II などは、ストリートを流しているときにはノーマル、首都高の環状線に乗ってスポーツにして、東名に乗り継いだらコンフォートにする。同じようにストリートではヒーター類は使わず、高速に乗ったらグリップヒーターを付け、気温の低いワインディングに入ったらシートヒーターもオンにする。オーディオの設定もしかりだが、一連の動作すべてをハンドルから手を離すことなく、ジョグスイッチで行えるのだ。しかもメーター内のインフォメーションも分かりやすく、初めて使ってもすぐに理解できる。しいてネガティブに感じたところを挙げるとすれば、クラッチの繋がり方。K1600GTL でも感じていたのだがガチャガチャ感がある。もう少しスイートに繋がってくれれば満点をつけよう。

何速の何回転からでも引き出せる圧倒的なパワー。K1600 のために鍛え上げられたデュオレバー (フロントサスペンション機構)。高次元で統率が取れたバランス。慣れてしまったら、これほど凶暴に走らせることができるモーターサイクルは無いだろう。

暴力的な“動”と紳士的な“静”とでも表するべきだろうか、このK1600GTの持つ二面性を覚えてしまったら、他のモデルがつまらなく思えるかもしれない。

こんな方にオススメ

1台持ちのメイン機として
なんにでも使いたい欲張りライダー向け

この車両を借用している期間が、ちょうど担当している雑誌の締め切りと重なっていた。朝から晩まで取材し編集し原稿を書く。寝る間も無いような忙しい日々なのだが、ガレージに置いてある K1600GT をみると、乗らずにいられなくなってしまう。とにかく走り回った。遠くといってもたかだが 200キロほどのツーリングにしか出ていないが、それでも他のバイクとは格段に時間は短くて済むし、疲労度も断然少ない。とにかく走る気持ちを掻き立てられるのだ。他のモデルを借りてきてこんな気分になることは、そうそう無い。雨の日も晴れの日も、渋滞路も高速道路もワインディングも、どこを走っても気分が良くなる。K1600GT はモーターサイクルを愛していることはもちろん、走ることに格別な喜びを感じ取れるライダーにぜひ乗っていただきたい。

K1600GT の詳細写真

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コロナリングが目を惹くヘッドライト。各種センサーを介してコーナーの先を自動に照らすインテリジェントヘッドライトコントロール (アダプティブヘッドライト) を標準装備しており、かなり明るく、夜間走行が楽しくなる。
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コクピット中央には 5.7 インチ大のTFTカラー液晶を採用したマルチファンクションタイプのパネルを設置。サスペンションをはじめとした車両の状態やオーディオのチューニングなど、さまざまなインフォメーションがひと目でわかる。
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ウインカースイッチをはじめ、電動スクリーン、メニュースイッチなど走行中に必要とされるスイッチを左手側に集約している。中でもほとんどの操作に精通するジョグダイヤルは使い勝手が良くライダーフレンドリーな装備。
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左手側のスイッチと比べ、右手側のスイッチボックスはスタートボタンとモードボタンに集中ロックボタンのみとシンプルなものとなっている。ボディ脇の小物ケースからパニアケースまで一手にロックと解除ができる集中スイッチは非常に便利。
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サイドパネル左の内側には、オーディオのセッティングボタンが並ぶ。ハンドル部分のスイッチから離した場所に設置したのは、オーディオの詳しい操作は、ライディング中に必要がないということからだろう。
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ライダー側のシートを外すと顔を出すプレート。このパーツを表裏することで、シート高を 810/830mm のどちらかに設定可能。車載工具はトルクスレンチのみ。なお、オプションでローシート (780/800mm) も用意されている。
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テールキャリア部分は、純正トップケースのベースの役割も兼ねている。十分な広さとフラットな作りで、キャンプ道具など簡単に積むことができる。トップケースが無い分 GTL と比べ高速安定性も高いと感じた。
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K1300 シリーズ同様にデュオレバーを装備したフロント周り。ちなみにデュオレバー上部は 10mm 引き上げられ、ボールジョイントとの距離を離したことにより、高荷重時においての安定性を向上させることに成功している。
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前後ウインカーやストップランプなどの灯火類には高輝度 LED ライトを採用。特にフロントウインカーは、フェアリングの内側に上手く配置できた上に横方向からの視認性が高く、デザイン性と機能面が高い次元で両立できてる。
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防風性能が高いため開発された、走行風をライダーへ導くためのフラップ。フェアリングの一部を外側に開くことで、風を大きく取り入れることができる。昔の車でよくみられた三角窓のような機能だ。
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乗車姿勢時にヒザの前にあるボックスの蓋を開けると、ポータブルプレーヤーと接続するコネクタが姿を現す。好みの音楽を流しながら、ロングツーリングも快適に楽しめるというわけだ。
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最大の特徴ともいえる並列6気筒エンジン。跨ってみると、そのエンジン幅が狭いことに本当に驚かされるだろう。他のモーターサイクルでは感じたことの無いほどの、官能的かつ強烈なパワーフィールを楽しめる。
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ライダーを極自然な乗車姿勢にするのに一役買っているステップ位置。K1600GTL のようなワイドタイプではなく、一般的なステップを使用し、コーナー時の入力も違和感無く行える。
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タンデムでのロングツーリングも快適にこなせるように設計されている。タンデムテストも行ったところ、タンデマーの乗車姿勢もゆとりがあり、なおかつホールドしやすいため疲れにくいとのこと。タンデマーのシートヒーターも嬉しい装備。
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ソロ、タンデム、荷物などの乗車状態や、シチュエーションに合わせたライディングスタイルなど、細かいサスペンションの設定がボタンひとつで可能な ESA II (オプション設定) は、ぜひとも体験して欲しい装備だ。サスセッティングの重要さが理解できるはず。
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K1600GT / GTL 専用設計となるパニアケース。ボディ側とあわせたデザインをしており、かなりの容量がある。もちろん着脱可能で、旅先などでも便利に使うことができる。
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6気筒エンジンにちなんで、マフラーエンドも6つの出口をデザインしている。余談だが、初期型Kシリーズでは4気筒モデルでは4角形、3気筒モデルでは三角形断面のマフラーを採用していた。
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1600cc 6気筒エンジンが生み出す強大なトルクとパワーをロス無くリアタイヤへと伝達させるには、やはりシャフトドライブが最適だ。リアアクスルドライブは K1600GT / GTL 専用設計となっている。

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