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BMW Motorrad G310GS(2020)/ GSシリーズのボトムラインを支える秀逸なモデルを試乗インプレ

  • 掲載日/2020年01月16日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad  取材・写真・文/小松 男

BMW Motorrad G310GS (2020) / GSシリーズのボトムラインを支える秀逸なモデルを試乗インプレの画像

BMW G310GS (2020)
BMW Motorrad屈指の人気カテゴリーである”GS”。その末弟となるG310GSは、普通自動二輪免許で、GS特有の世界観をしっかりと堪能できるモデルだ。

アドベンチャーカテゴリーを確立した
GSという名のバケモノモデル

GSの歴史は1980年に登場したR80G/Sから始まった。イニシャルであるGSは、ゲレンデ・シュポルトという意味を持ち、デュアルパーパス的な位置づけとされていた。しかもそれは見た目だけのものではなく、世界一過酷だと言われるオフロードレースでもあるパリ・ダカールラリーで優勝を遂げるなど、確かなポテンシャルを我々に見せつけるとともに、さらにオフロード走行を意識したパリダカールモデルも追加されていった。

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その後時代は進み、4バルブ化された水平対向2気筒エンジンを搭載するR1100GSが登場する。それまでのGSはオフロード色が強かったのに対し、新しいGSは長距離をより快適に速く走破することのできるグランドツアラー的要素が強くされ、それが結果的に、世の中のライダーに受け入れられ、大ヒットすることとなる。その一方でよりコンパクトで軽量な単気筒エンジンモデル、F650GSを登場させ、さらにはオフロード性能を引き上げたR1150GSアドベンチャーやF650GSパリダカールなどを追加、一気にGSワールドは広がりを見せて行った。この頃になると「アドベンチャー」という新たなカテゴリーの名が飛び交うようになる。そしてR1200GSへと進化を遂げると、GSはその地位を不動のものとし、並列2気筒エンジンとなったFシリーズも同様に熟成してきた。

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スペースが許されるならもう少しつけ足しておきたい。当時のBMWモトラッドはオフロード部門に力を入れていた。パリダカでの王座奪還をはじめレースでのステップアップを目論んでいたこともあり、オフロードバイクメーカーであるハスクバーナを傘下に収めたことからもその本気度は伝わってくる。HP2エンデューロやG450Xなどのリアルエンデューロモデル、そしてF-GSとは異なる訴求方法をとったG650シリーズなど、とにかく土を匂わせるモデルを矢継ぎ早に登場させてきたのだ。

現在でこそ、ヘリテイジモデルやスーパーバイク、シティコミューターなど様々なセグメントに、それぞれ人気役者を持つBMWモトラッドだが、20世紀から21世紀にかけての同社の歴史においてGSというのは、無くてはならない存在だったのだ。そんなGSファミリーの末弟となるG310GSが登場したのは2017年のこと。最初期購入者の中には車検を迎える時期に差し掛かっているかもしれないというタイミングではあるが、改めてG310GSをじっくりとテストしてみよう。

BMW G310GS (2020-)特徴

扱いきることのできない兄貴分より、
むしろG310GSの方が健康的

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様々なセグメントのモデルを追加したBMWモトラッドではあるが、GSの人気、地位は変わらず不動と言える。現在国内販売されているGSファミリーには、R1250GS、R1250GSアドベンチャー、F850GS、F850GSアドベンチャー、F750GS、そしてここで紹介するG310GSがラインナップされており、アドベンチャーセグメントとしてはS1000XRもそうであるし、ヘリテイジセグメントも含めるならばアーバンG/Sというのもある。なんとも、よくこれほどまでに細分化させたものだとも思わずにいられないが、実際に乗ってみるとそれぞれ個性的なノリモノとして成り立っていることには感心させられる。

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G310GSは、先に登場していたG310Rとエンジンやフレームを共通のものとしながら、スタイリングや足まわりなどの変更を行って誕生した。以前は日本の免許制度で言うところの普通自動二輪区分のアドベンチャーモデルというものは数少なかったのだが、ホンダ・CRF250ラリー、スズキ・Vストローム250、カワサキ・ヴェルシス-X250、KTM・390アドベンチャーなど、ここ数年間で各メーカーがこぞって登場させた。積載量をはじめツーリング性能を高めたもの、オフロードでの確かな走りを保証するものなど、それぞれに特徴的な部分を持っているが、共通しているのは、ビッグモデルと比べ、誰しも日常的に取り入れられるアドベンチャーモデルとしてまとめられているところだ。ライバルが多いステージにおいて、G310GSがどのような立ち位置なのかと言うと、アドベンチャーモデルの先駆者という確かなブランド力と、実際に触れると分かる上質な仕上がり、この2点によるクラスを超えたラグジュアリーモデルとなっている。

BMW G310GS (2020-)試乗インプレッション

GSビギナーやヤング層だけでなく、
既存のGS使いにも乗ってほしい一台

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G310GSは遠目からは、他の兄弟モデルと比べコンパクトに見えるが、近づいてゆくほどそれが錯覚なのだと分かる。エッジの効いたフロントマスクから燃料タンク、グラブバーも兼ねる大型リアキャリアにかけてのラインはGSならではのデザインを踏襲しており、特に835mmというシート高からの視界は、まさしくGSファミリーのそれだ。そして820mmのローシート、850mmのハイシートも設定されているのもポイントだ。

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RやFのGSが電子制御及びインターフェースがてんこ盛りになっているために、スイッチボックス部分の進化が著しいのに対し、ABS以外は大きな電子制御システムを有していないG310GSのスイッチボックスはいたってシンプル。「いまだにすべての機能を使いこなせないんだよ」と言っているオーナー(BMWのみならず昨今の最新鋭ビッグバイク全般)の声をしばしば耳にしているし、簡単な方がとっつきやすいというのは間違いのないことだ。コクピットを眺めそんなことを思い浮かべながらセルボタンを押しエンジンに火を入れる。エンジンの回転が落ち着くまでしばし暖機運転を意識しながら発進させる。

313ccという排気量は、250ccや400ccを境目としている日本では半端なものに思えるかもしれないが、世界的な視野でレギュレーションを考えた際、というかG310GSが受け入れられるマーケット国を意識して見ると、ベターな排気量だ。日本では車検こそ必要となるが、250ccエンジンモデルに比べれば格段にパワフルであり、その分扱いやすい。アイドリング時に1,000回転を超すところを推移していたのが少々気になったが、BMWモトラッドは昔から単気筒エンジンのアイドリングが高めの設定だった。

前後とも180mmという大きなストローク量を誇るサスペンションは、とても動きが良く、市街地ではキビキビと、高速ではゆったりと、ワインディングではしなやかな乗り心地を提供してくれ、GSの名に恥じない仕上がりだと感心させられる。特にハンドリングに関しては秀逸であり、ワインディングでは快感を覚えるほど心地よいものだ。そして未舗装路に持ち込んでもこの足まわりは大活躍し、快適な走りを堪能することができる。末弟やベイビーGSなどと呼ばれるが、むしろGSらしさは、現行の兄弟分と比べ増していると感じさせられた。

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あえて重箱の隅をつつく的な意見を述べるとしたら、ブレーキ及びクラッチレバーが遠く感じられたところか。手の小さなライダーでは慣れが必要だと思うし、固定式なので調整もできない。

BMWモトラッドは、いつもモノ創りに拘ってきた。G310GSに搭載されている単気筒エンジンだが、一般的には車体後方から吸気し前方に排気システムを繋げるのに対し、G310GSは前方から吸気し後方に排気する方式を取っている。さらにはシリンダーは後傾する恰好となっている。前傾するエンジンを見慣れているため、はじめは違和感があったが、これが走らせてみるとマスの集中に貢献していたり、全回転域でトルクフルなキャラクターを作り出していることに繋がっており、利に適っているレイアウトなのだと分かった。

恥ずかしながら試乗しはじめた瞬間は 「もう少しパワーが欲しいな」と感じたことを告白しよう。しかしそれもすぐに払しょくされることとなる。もちろん普段大型バイクを嗜んでいる諸兄が、ビッグGSを扱うように、パワーの出方を気にしながらソロソロとスロットルを操作すれば”タルい”と思うだろう。しかしG310GSは、313ccで最大出力は34馬力のマシンだ。ガバガバとスロットルを開けてこそ、その本質が楽しめる。現にスロットルワークだけでも簡単にフロントアップさせることができるし、少々攻めるような走りをすると、コーナーリング時のトラクションの伝わり方もよりベターなものだった。さらには未舗装路でのコントロール具合も、この排気量だからこそ自分のスキルで楽しむことができると言える。

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少々過激な乗り味と感じるようになってきたRやFのGSは、確かにエキサイティングではあるが、一方でセーフティーさを高めるために電子制御が必須となってきている感もある。G310GSは素のままで十分にGSワールドを体感させてくれるし、トータルバランスが高い次元でとれているため、電子制御システムを有さなくてもとても安全に楽しむことができる。これは以前より様々なモデルをテストしてきた私にとって、とても”BMWモトラッドらしい”と言えるものであるし、むしろ昔ながらのGSを走らせる喜びを感じさせてくれるものだ。車両価格69万5000円という値付けもばっちりだが、個人的には少々高くなっても、ロングスクリーン、ハイシート、ビッグタンク、フルパニアを装備し、あと数馬力引き上げた、G310GSアドベンチャーの登場を期待している。

BMW G310GS (2020-)詳細写真

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313ccDOHC水冷単気筒エンジンを搭載。写真をよく見るとシリンダーが後傾してセットされていること、シリンダー後方にエキゾーストパイプが設置されていることが分かる。この独特なレイアウトもG310GSの特徴だ。

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リアサスペンションはプリロード調整が可能なモノショックタイプ。サスペンションストロークは前後とも180mmとされ、ダイナミックな走りをサポート。サスペンションにマッドガードが設置されているのもオフロード走行を意識させるポイント。

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ロッド長を調整することで、チェンジレバー位置を変更可能。オフロード走行時など、ステップのゴムカバーを外せばブーツのグリップが良くなる。ステップ上方のGSロゴが備わるパーツは、ヒールガードとしての機能も併せ持っている。

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GSシリーズのアイデンティティでもある鋭いフロントノーズデザインを踏襲しており、誰もがひとめでBMWのGSモデルだと分かるものとなっている。ヘッドライトにはオーソドックスなH4バルブが採用されている。

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ヘッドライトケースの上部には、ウインドスクリーンが備わっている。小ぶりながらも、大きな整流効果を発揮し、これがあると無いとでは、快適さが格段に違う。社外アフターパーツではロングスクリーンなども存在している。

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インストゥルメントパネルはフル液晶表示。視認性が良く、各インフォメーションが伝わってきやすい。なお、回転計のレッドゾーンは10,000回転からとなっているが、レブリミットは11,000回転で作動した。

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ハンドル周辺は乗車中いつも目に入ってくるところ。その中央部となるハンドルライザーには、小さなプロペラエンブレムが備えられている。ハンドルバーが艶消しブラックとされているのも締まっていて良い。

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オーソドックスタイプのスイッチボックスには、ホーン、ウインカー、ハイロー切り替えとパッシングのほかに、オフロード走行時などのために、ABSのカットスイッチが備わっている。

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車体後部には、パッセンジャーのグラブバー要素も兼ねた大型ラゲッジキャリアを標準で装備する。このキャリアは、純正トップケースベースともなっている。純正オプションでトップケースは用意されているが、残念ながら純正パニアケースの設定は無い。

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フロントサスペンションは、φ41mmの倒立フォークを採用。180mmを誇るストローク量は伊達ではなく、幅広いシーンで、しなやかな動きを得られる。泥除けフェンダーもオフロード好きには嬉しい装備。

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車体裏側を覗くと、グラブバー兼リアキャリアの取り付け部分が、荷掛けフックとなっていることが分かる。ゴムバンドなどでバイクに荷物をくくりつけたことがあるライダーは知っていると思うが、これがあるだけで、ずいぶんと積載が楽になるのだ。

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ブレーキには、ブレンボ社の小型モデル用ラインであるバイブレのキャリパーを前後ともに採用している。ABSはカット機能付きを標準装備。スイングアームはR310Rと共通のものとされている。

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燃料タンク容量は11Lで内1Lがリザーブとされている。燃費が良いため、かなりの航続距離を稼げるが、ビッグタンクを備えたアドベンチャーモデルが登場することも期待している。

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ライダー、パッセンジャーが一体となったシート。標準タイプのシート高は835mmで、820mmのローシート、850mmのハイシートの設定がある。GSだから仕方ないという高さだが、乗車時のサスペンションの沈み込みはわりと大きい。

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シート下には標準装備のETC2.0のユニットがセットされるほか、ABSユニットやバッテリー、ODBカプラーなどが収められており、さほど余裕はない。

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フロント19、リア17インチのタイヤサイズは、GSモデルのスタンダード。ブレーキはシングルディスクながらも十分な制動力を持っており、何よりもコントローラブルだ。

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