VIRGIN BMW | #03 メガモトをレーサー仕様に!カーボン外装製作編 HP2メガモトもて耐参戦記

#03 メガモトをレーサー仕様に!カーボン外装製作編

  • 掲載日/2009年08月03日【HP2メガモトもて耐参戦記】
  • 取材協力/Tras  文/新田 正直
HP2メガモトもて耐参戦記の画像

がんばれ!『Tras チーム』

2008年にはHP2 Sportで参戦し、「もて耐史上初」となる外国車優勝を遂げたトラスチーム。今年はディフェンディング・チャンピオンとして、HP2 Megamotoで挑戦します。レース本番は8月22日(土)。当日はBMW BIKESのヒミツ集会&HP2オーナーズミーティングも同時開催し、みんなでトラスチームを応援しました。たくさんのご声援・ご参加、ありがとうございました!

本職をフルに活かして外装製作
ウチの技術力は世界一です!

外装のモデルが仕上がると、次はメス型の作成に移ります。カーボン製品を作成するためのメス型は、本来エポキシ樹脂とカーボンを使用します。基本に忠実なTrasでは、惜しげもなくふんだんにカーボンを使用したメス型を作成します。

ところで、バイクやクルマの外装にはなぜカーボンを使用するのか? それは軽く、強く、比強度が高い、様々な形状の再現が可能な素材だからです。しかしそんな一般的な文面では『もて耐参戦記』を楽しみにしている方に申し訳ないので、Trasの本音を追記しましょう。ズバリ! 「我々はカーボンの持つ素材の美しさに取り憑かれてしまった集団だから」です。ちなみにBMW AGは、カーボンに取り憑かれた企業の代表ですね。莫大なコストを投資し、カーボンの表情を車やバイクのデザインに取り入れ、世界で初めて、量産市販車に漕ぎつけたのですから。

デザインに注力し、出来るだけ素材の持つ特徴を生かした“ものづくり”をするということは、大手企業も中小も考え方はみな同じです。Trasではエンジンヘッドカバーをカーボンで補強し、転倒しても割れないヘッドカバーを製作することで、カーボンの性能、可能性、そして我々の技術力を実証してきました。素材の持つ機能を最大限に引き出せるのは…? そう! Trasだけでしょう!

さてさて、外装の形成が完了したところで、あとは塗装をすればマシンの出来上がり=シェイクダウンです。しかし! ここで“大”問題発生! 容量確保のため大きく創ったタンクに、タンクカバーが干渉してしまって装着出来ないことが判明! タンク&外装のモデルを別々に作成していたのですが、燃料ポンプの配線&配管の測定を忘れ、カーボン強度を設計構成のクリアランス設定として外装カバーを作成してしまったので、燃料ポンプを取り付けると外装がピッタリ載らない…シェイクダウンに間に合うのか~!?

ここはデザインから製作までこなすTrasの強みを発揮! 干渉するところを切り飛ばし“切った貼った”の繰り返し、すると…あーら不思議、ポンプの逃げ部はデザインの一部となり、ビーターのロゴスペースと化したのでした!

次回、いよいよこのマシンをサーキットで走らせ、ベストなセッティングへと調整していきます!

HP2メガモトもて耐参戦記の画像
今回Trasで製作したカーボンパーツは、フロントフェンダー、アッパーカウル、メーターパネル&アッパーカウルステー、オイルクーラーシュラウド、一体式タンクカバー、シートカウル、アンダーカウル、フレームサイドカバー(カーボン板)、それにシリンダヘッドカバーにはカーボンを積層した強度アップが図られている。
HP2メガモトもて耐参戦記の画像
塗装で隠れてしまうのがもったいないほど綺麗な繊維模様。ひとつのパーツでも、そこにかかる力の程度や方向によって、カーボン繊維の向きも積層も変えていく。知識やノウハウが問われる職人技ポイントだ。しかしここまで作って“大”問題が判明するとは…。
HP2メガモトもて耐参戦記の画像
すべての基となる『カーボンプリプレグ』。生産量は日本が世界トップ。航空機産業への需要が高いため、クルマやバイクのパーツ用に入手できる量は限りがある希少なもの。保管には-18℃の気密室が必要で、品質管理もたいへんデリケートな高級品だ。
HP2メガモトもて耐参戦記の画像
ノーマルの車体に被せるようにして『捨て型』を作成。デザインに関してはメガモトのイメージを残しつつ外装はフルチェンジ。このこだわりはメガモトのデザインを手掛けたデイヴィッド・ロブ氏も認めるところ。
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完成した『捨て型』で取り付け位置を確認。車体やライダーの動きを考慮して微妙な調整を繰り返す。
HP2メガモトもて耐参戦記の画像
取り付け位置が決まったら、モデルクレー(ケミカルウッド使用)で『捨て型』に面付け、完成型のモデルを作成していく。盛ったり削ったりの作業はまさに熟練の技。出来るようになるまでは相当な経験が必要だ。
HP2メガモトもて耐参戦記の画像
完成した『オス型』モデル。この時点で一体型タンクカバーのイメージがカタチとして出来上がっている。
HP2メガモトもて耐参戦記の画像
『オス型』モデルを基に『メス型』を作成。素材にはカーボンとエポキシを使用する。
HP2メガモトもて耐参戦記の画像
『メス型』にあらかじめシートから型ヌキしたカーボンを積層していく。力のかかるポイントに合わせて織り目の向きや積層の度合いを複雑に変化させている。ちなみにカーボンの織は、平織よりも比強度が高く、ビジュアルが美しい綾織を使用。反面、加工が難しくコスト高。
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完成! と、思いきや上手く載らないことが判明…。一体型タンクカバーがフューエルポンプに干渉し、シートカウルまで浮き上がってしまった。
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メーターパネル&アッパーカウルステー。複雑な形状でもデザインから製作まで完璧にカーボンで形成してしまうのもTrasの技術力が光る部分。風圧に耐えるアッパーカウルや振動が加わるメーターを支える重要なパーツだ。
挑戦者
新田 正直 Masanao NITTA
ドライカーボン製品のデザインから設計、製造、販売まで、つねに新たな挑戦と遊び心をもってモノづくりに取り組む“ドライカーボンの職人集団” Tras代表。カーボンという“夢の素材”で、そのメリットを最大に活かしたハイクオリティな製品は世界トップレベル。自身もBMWオーナーとして、R100ロードスター、R1200RT、HP2 Megamoto(もて耐仕様)を所有。自社の技術力向上と新たな挑戦の一環として、2006年の鈴鹿8耐、2008年のもて耐など、周囲の人間と愉しみながらBMWでのレース参戦に挑む。毎年レーサーの製作(外装)を行い、単なる工業製品ではなく、誰もやったことのない付加価値のあるものづくりを目指すチャレンジャー。

がんばれ“Trasチーム”!

この記事に関するコメント(ご意見、ご感想、ご声援など)を受付ています。メガモトレーサー製作は、すべてプロフェッショナルの手により、豊富な知識と経験、確かな技術によって、レーシングユースを前提とし、参加する人やその周囲の人たちが愉しみながら行っています。

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これまでのコメント一覧

coji さん

Trasチーム頑張ってください!
参考までに、ご教示下さい。
今回のこの作業、例えば個人のワン・オフでお願いした場合、如何ほどの予算が要るのでしょうか。非常に興味があります。
レ-ス、頑張って下さい!

Tras 新田 さん

>cojiさん
興味を持っていただき幸いです!
でもゴメンナサイ「ハイ幾らです!」なんて答えられる金額ではありません(汗)
22日はぜひ応援に来て下さい!!

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